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資産運用立国

岸田政権が掲げる資産運用立国実現プランとは?個人投資家が抑えておくべき基本と方向性を解説

難易度:

執筆者:

公開:

2024.05.01

更新:

2024.05.02

資産寿命資産運用

目次

今度こそ「貯蓄から投資」を進めたい政府

資産運用立国実現プランとは?

政府が実現プランで目指す姿

資産所得倍増プラン

コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プラグラム

資産運用業・アセットオーナーシップ改革

資産運用立国実現プランを個人投資家はどう踏まえ行動すればいい?

抜本的拡充・恒久化が図られたNISAの活用

改革が期待される企業年金のフォロー・活用

ガバナンス改革が進む日本企業のフォロー

多様な投資商品のフォロー

まとめ

資産運用立国実現プランとは、岸田政権が打ち出した経済活性化に向けた政策です。簡単に言うと、日本の資産運用を活発にすることで、国民の資産所得を倍増させ、経済全体の活性化を目指すプランです。

同プランには、資産運用会社や年金基金の運用能力を高めたり、運用力を高めるために海外の資産運用会社の参入を促進したり、資産運用を自由に行うための規制緩和を行う特区の創設といった施策が盛り込まれています。

これらの施策は一見、個人投資家の皆さまには無縁の内容に感じるかもしれませんが、大いに影響があるものです。なぜなら、資産運用会社は投資信託を通じて、年金基金は年金保険料の運用を通じて、皆さまの資産を預かり増やす重要な役割を担っているからです。運用能力の向上は、個人投資家へのリターンの増加につながります。さらに、海外の資産運用会社の参入により市場が活性化されれば、資産価格の上昇が期待できます。

それら実現に向け、、政府が資産運用会社や個人の資産運用をどう変えようとしているかといった内容を同プランから学ぶことができます。すでに資産運用ををしている人、あるいは今後資産運用を行おうとしている人のどちらにも重要です。長期的な資産運用の大きな方針を立てる際、また実際に投資をする際に、心に留めておくと良いでしょう。

この記事では、岸田政権の資産運用立国実現プランについて説明するとともに、個人投資家とって重要なポイントを解説していきます。

今度こそ「貯蓄から投資」を進めたい政府

資産運用立国実現プランがあなたのような個人投資家に期待することは「貯蓄から投資」を進めることです。「貯蓄から投資」というテーマ自体は、小泉政権が2001年に打ち出した「骨太の方針」がスタート地点です。しかし、それから20年が経過した今でも、2000兆円を超える個人の金融資産の半分以上が現金・預金で保有され、株式投資は2割以下です。その結果、この20年間の家計金融資産の額の推移を他国と比較してみると、米国では3倍、英国では2.3倍になった一方、日本は1.4倍にとどまっています。国民の投資性向の低さは経済成長を停滞させている一因となっていると考えられています。

国民の金融資産が運用に回り利益が上がると、その運用益は資産所得となります。ただ銀行に預けておくだけではなく、国民が自発的に資産運用を行うことで経済を活性化し、日本経済の停滞を脱却しよう、というのが「資産所得倍増プラン」です。「資産所得倍増プラン」を包含し、国全体として資産運用立国を目指すためのプランをまとめているのが、本記事のテーマでもある「資産運用立国実現プラン」となります。

資産運用立国実現プランとは?

 資産運用立国実現プランで目指すビジョンを一言で言うと「国全体の資産運用を活発にして、個人の資産も倍増させ、経済全体を活性化させよう」ということです。

 資産運用立国実現プランは、新しい資本主義を実現するための政策の一つです。一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、新しい資本主義とは、失われた30年ともいわれる日本経済を「成長と分配の好循環」によって再び成長軌道に乗せようとするものです。 新しい資本主義の実現に向け、大きく4つの投資分野が定められています。 一つ目が、科学技術・イノベーション。二つ目が、スタートアップやオープンイノベーション、三つ目が、GX(グリーントランスフォーメーション)やDX(デジタルトランスフォーメーション)。それら新しい領域と並んで重点投資分野とされているのが「人」です。その根底には、イノベーションを興すのも、スタートアップを創業するのも、DXによって社会課題を解決するのも、主体は人であり、そこへの投資も不可欠であるという思想があります。 人への投資の具体的な内容としては、賃金引上げの推進やスキルアップを通じた労働移動の円滑化といった最近ニュースを賑わせているトピックとともに、貯蓄から投資のための「資産所得倍増プラン」の策定が謳われております。

 資産運用立国実現プランは、主に個人を対象とした「資産所得倍増プラン」、企業を対象とした「コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プログラム」、2023年12月にまとめた資産運用業・アセットオーナーシップ改革に焦点を当てた文書で構成されています。ここでは、それらのエッセンスと背景にある考え方を紹介します。

政府が実現プランで目指す姿

資産運用立国実現プランの実行によって日本政府が目指すのは、①預金を投資に向けること、②企業はガバナンス改革を進め、国内のほか、海外投資家からも資金を集め企業価値向上を実現する、③企業価値向上によって実現した企業利益や株価の上昇や配当増、賃金上昇の恩恵が家計に還元される、④還元を活かして家計がさらなる投資や消費を行う、といった「成長と分配の好循環」を実現していくことになります。好循環を回すためにも、まずは家計の現預金を投資に向けていく必要があります。

資産所得倍増プラン

資産所得倍増プランは2022年11月に公開されました。次の7つの柱で構成されています。

1.家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるNISAの抜本的拡充や恒久化

NISAの抜本的拡充や恒久化は2024年1月からスタートしました。拡充によって非課税保有期間の無期限化と非課税限度額の引上げが行われました。これにより、中間層を中心とする層の資産形成を更に促進します。

2.加入可能年齢の引上げなどiDeCo制度の改革

iDeCoの加入可能年齢が70歳に引き上げられます。また、拠出限度額の引上げ及び受給開始年齢の上限の引上げについて、2024年の公的年金の財政検証に併せて結論を得るとされています。

3.消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設

貯蓄から投資が進まない原因の一つは国民の金融リテラシーの低さにあると考えられています。そのため、政府は今年中に金融経済教育推進機構(仮称)を設置し、中立的なアドバイザーの認定や、これらのアドバイザーが継続的に質の高いサービスを提供できるようにするための支援を行うとしています。

4.雇用者に対する資産形成の強化

企業を通じた雇用者の経済的な安定の取組を活性化するため、職場において中立的な認定アドバイザーを活用する取組を企業に促すとしています。また、中小企業においてつみたてNISAや企業型確定拠出年金、iDeCoが広がるように支援するようです。

5.安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実

金融経済教育推進機構(仮称)を中心として、金融経済教育の実施をするとしています。また、広く国民に訴求する広報戦略を展開し、官民一体となった効率的・効果的な金融経済教育を全国的に実施するということです。

6.世界に開かれた国際金融センターの実現

制度や税制のグローバル化、外国籍の高度人材を支える生活・ビジネス環境整備と効果的な情報発信などを進め、アジア・日本の経済の発展に貢献する「世界・アジアの国際金融ハブ」としての地位の確立を目指すとしています。

7.顧客本位の業務運営の確保

金融事業者などが顧客等の利益を第一に考えた取組を促すための環境整備を行うとしています。

これらの取組みを一体的に行うことで、国民の資産所得を倍増させることを政府は目指しております。

コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プラグラム

 コーポレートガバナンス改革の実質化に向けたアクション・プラグラムは2023年4月にまとめられました。アベノミクスの一環として、海外投資家からの日本企業への投資を拡大するために進められたのがコーポレートガバナンス改革です。

主に海外の投資家から見た当時の日本企業は、ダイバーシティに欠けたサラリーマン経営者を中心に「身内」同士で、なれ合いで経営する、いわゆる日本型のガバナンスによって企業価値を損ねているように映っていました。そこで英国発祥のガバナンスモデルを輸入し、海外からも投資される魅力的な日本企業にしようとしました。10年以上たった今では、その成果もあり、いくつかの日本企業がグローバルスタンダードのガバナンスを行っていると評価されるようになった一方、ガバナンスモデルを形式的にフォローしているだけで実質が伴っていない日本企業が多く存在しています。

そうした日本企業のガバナンス改革を「実質化」するためのアクション・プログラムをまとめたものがこちらです。具体的には、東証プライム市場上場企業を中心としたPBR1倍割れの改善のフォローや、有価証券報告書に新設された人的資本・知的財産・多様性を含むサステナビリティに関する情報開示の枠組みの活用などが含まれています。

資産運用業・アセットオーナーシップ改革

 資産運用業・アセットオーナーシップ改革については2023年12月にまとめられました。貯蓄から流れてきた投資資金を着実に増やし家計に還元するという好循環を回すためには、資産運用会社や年金基金などが重要な役割を果たします。日本の資産運用会社や年金基金の運用力を高めるとともに、海外から運用能力の高い資産運用会社の参入を増やそうというのが内容です。具体的な改革内容は5つの柱にまとめられています。

資産運用業の改革

傘下に資産運用会社を持つ大手金融機関には、運用力向上に向けたプラン策定・公表が求められます。また、資産運用業の国内外からの新規参入を促進するための施策も実施されます。これによって、国内の資産運用会社の運用力がよりハイレベルになり、国内には海外の資産運用会社が増えることも期待されます。個人投資家にとっては、より魅力的な投資商品が増えることになるでしょう。

アセットオーナーシップの改革

公的年金、企業年金、保険会社などのアセットオーナーの運用力を向上するための原則のとりまとめや企業年金の改革が図られる予定です。これによって、多くの資金を持っている公的年金や企業年金が、これまで以上に積極的な運用を行うようになることが期待されます。老後の資産形成のための一つの手段として、企業年金がより重要な役割を果たすようになることが期待されます。

成長資金の供給と運用対象の多様化

 スタートアップ企業等への成長資金の供給の促進とともに、投資信託への非上場株式の組入れを可能とするなど、オルタナティブ投資やサステナブル投資などを含めた運用対象の多様化が図られる予定です。個人投資家は、これまで以上に金融知識や投資先への理解が求められるようになります。

スチュワードシップ活動の実質化

 日本市場の魅力を高めるためには、資産運用業の改革とともに、投資家と企業とのミーティングなどを通じて、投資家が企業の魅力を十分に理解することが大事です。そういった投資家による活動をスチュワードシップ活動と呼び、これまでは形式的なものが多いと指摘されていたため、その実質化をはかることとしております。

対外情報発信・コミュニケーションの強化

 高めた魅力を発信していくことも重要です。そのために国内や海外の投資家を集めて魅力を説明したり、課題を聞いたりするフォーラムを立ち上げることとしています。

資産運用立国実現プランを個人投資家はどう踏まえ行動すればいい?

実現プランを踏まえ、個人投資家はどうすればいいのでしょうか。次の通り、大きくは4つにまとめられると考えられます。

抜本的拡充・恒久化が図られたNISAの活用

2024年から制度の大きな変更がなされたNISAの活用は個人投資家にとってきわめて重要です。非課税保有期間が無期限化され、非課税投資枠の再利用も可能になりました。また、つみたて投資枠と成長投資枠の併用が可能になるなど、より柔軟かつ長期的な資産形成が見込めます。個人投資家が株式や投資信託を非課税で投資できる制度であり、資産運用実現プランの肝となる預金から投資の動きを加速するものになります。個人投資家は、長期・積立・分散投資を基本とし、ライフイベントに合わせた資産形成を行うことが理想的です。また、投資初心者にも低リスクで参入しやすいよう設計されています。非課税枠の1,800万円を使い切れないからといって心配する必要はありません。自身の家計を踏まえ、できる範囲から毎月積み立てていくことが肝要です。どこからスタートしてよいのか分からない場合は、投資の専門家に相談を行ってみましょう。  個人投資家は税制上のメリットを享受しながら、より長期的な視点で資産運用を行うことができるようになります。NISAを活用し、効率的な資産形成を進めていきましょう。

改革が期待される企業年金のフォロー・活用

 企業年金制度の改革も、資産運用立国実現プランの重要な部分です。これまでの企業年金は不透明であった企業年金の運用状況の見える化の検討も行われ、他社との比較などもできるようになることが期待されます。DBは運用力向上による予定利率の引上げ、DCに関しては適切な商品選択に向けた改革なども行われる予定です。  公的年金に期待ができなくなってくるなか、さらにはデフレ脱却によって、企業年金はさらに重要性がますことになります。個人投資家は、企業年金も含めて、自身の退職後の資産形成をより有効に計画できるようになることが期待されます。自身が勤めている企業年金の改革をフォローし、自身の運用戦略に取り入れることが重要です。

ガバナンス改革が進む日本企業のフォロー

 今年に入って海外投資家の日本株の買い越しが続いており、日経平均株価も上昇を続けております。この要因として、ある面では、日本企業のガバナンス改革が評価されていることがあると考えられます。今後、さらなるコーポレートガバナンスの改革の進展や実質化によって、日本企業は海外投資家からみてさらに魅力的になり、海外からの投資もさらに拡大することが期待されます。取締役の多様性を高めたり、PBR1倍に向けた取組みを進めたりする魅力的な日本企業をフォローし、自身の投資ポートフォリオの一部として考慮することが重要です。これまでであれば、投資は成長のとまった日本企業ではなく、伸びしろがある海外企業という考えもあったかもしれません。時には専門家に相談をしながら、今一度、自分が応援をしたい日本企業を探してみるのもよいかもしれません。

多様な投資商品のフォロー

 資産運用立国実現プランにより、これまで以上に多様なリスク・リターン特性を持つ投資商品が提供されるようになります。例えば、サステナブル投資とよばれる脱炭素の取組みが進んでいる企業を集めた投資商品や、まだ上場していないスタートアップを組み込んだ投資商品も提供されるようになります。これから上場株式や債権といった商品とは異なる時間軸、リスク・リターンでの投資が必要になります。個人投資家は、これらの多様な投資商品を理解し、自身のリスク許容度や投資目的に合わせて選択することが求められます。新しい投資商品に関しては、新たに勉強をしなければならない部分もでてきます。必要に応じて、専門家への相談を忘れないようにしましょう。

まとめ

 岸田政権が進められている資産運用立国実現プランは、預金から投資の動きを起点とした日本経済の新たな方向を示しています。政府は預金から投資の動きを進めるために、個人投資家に対しても大きなインセンティブを提供しています。個人投資家は、そういった政府の施策の意図や方向性を理解し、適切に対応していくことが重要です。 そのためにも、個人投資家は、NISAの活用やDB、DCなどの企業年金改革のフォローといった内容とともに、ガバナンス改革が進む日本企業や新たな投資商品も投資ポートフォリオに含めることの検討も重要になってきます。とくに後者の2つに関しては、企業分析や金融商品の理解などの専門的な知識が求められる部分もあります。資産運用立国実現プランを踏まえ、タンスに眠っている現金を使って投資を始めてみてはいかがでしょうか。

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